日本において、コミットという言葉が普及したのはおそらくここ数年のことでしょう。
有名企業のテレビCMによって一気に浸透したのがきっかけです。
今ではビジネスシーンを中心に、コミットするという言い回しがよく聞かれるようになりました。
しかし外来語を何となく使ってしまうのは危うい行動です。
そこでコミットについて、意味や用法のほか応用フレーズなども紹介します。
正しく理解し、適切な運用につなげましょう。
Contents
コミットするとはどんな意味?語源や英語をおさえる!
コミットするとは、どんな意味なのでしょうか。
まずは語源や英語表現といった基本を押さえていきましょう。
コミットとは
コミットメントの略語!意味は「関わりあうこと」
コミットはコミットメントの略語です。コミットメントとは、関わり合うことを意味します。
ただし、一口に関わり合うといっても単純ではありません。
ビジネスにおいては売買取引であったり、人とのやり取りであれば誓約や約束であったりします。
裏を返せば、散歩の途中にご近所さんと挨拶を交わす、という程度の関わり方ではないということです。
つまりコミットメントの本質とは、他者や社会に対して責任や重みを伴った関わり合いなのです。
コミットを英語で表すと?
コミットは元々、英語の“commitment”に由来するカタカナ語です。
コミットメントを略してコミットと発音するようになったのです。
“appointment”(アポイントメント)をアポイント、あるいはアポと略す事例とよく似ていますね。
ちなみに英語圏でコミットと発音すると、良からぬことをはたらく・罪など犯すという意味の“commit”と取り違えられる可能性があります。
確かに英語“commit”にも、日本語表現のコミットと同じ意味はあります。
しかし辞書で引いても、かなり低い優先順位で扱われている点を押さえておきましょう。
英語圏では、コミットという発言を控える方がよさそうです。
プロミスより重い!?ビジネスにおけるコミットの使い方と例文
先の項でコミットが使われる時は、重い責任が伴う場面であると述べました。
ビジネスシーンでコミットという場合も、主に取り決めや契約などといった重要な契機が大半です。
そこでビジネスシーンにおけるコミットに注目し、使い方と例文を紹介します。
コミットの使い方と例文
責任を伴う約束をすること
コミットとは責任を伴う約束をすることです。
約束という意味ではプロミスとよく似ていますが、それぞれ微妙にニュアンスが異なります。
プロミスのルーツである英単語“promise”には、前もって言うというニュアンスが含まれます。性質としては、宣言に近いといえます。
一方、コミットの場合は言質や実行責任というニュアンスが含まれます。つまり約束を果たせなかった場合も責任が付いて回るのです。
プロミスとコミットを比較すると、やはりコミットの方が責任の重みを伴う言葉だと考えられます。
ちなみに元々、金融業界ではコミットの概念が定着していました。有価証券の売買契約の際にはコミットを取り交わすのがセオリーなのです。
ただし、かねてからコミットという略語を使っていたかどうかは不明です。以前は「コミットメント」と呼んでいた可能性もありそうですね。
「約束」の意味で使う場合
コミットは大きく2つの意味に分かれます。まず、約束の意味で使う場合を紹介します。
先述の通り、コミットが持つ約束の意味とは実行責任を伴う約束です。
ビジネスシーンでコミットがよく使われるのも、単なる口約束ではなく言質や責任が伴うからですね。
例文
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「関わる」の意味で使う場合
2つ目の用法として、コミットには関わるという意味もあります。
ただし単に関わるというのではなく、積極的に関わる・深く関わるというニュアンスです。
和訳としては関与する、という言い回しが一番適切かもしれません。
例文
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フルコミットとはどんな意味?
フルコミットとは日本特有の造語です。
成り立ちとしては「フル」と「コミット」をつなげたもので、最大限の責任・全責任という意味合いを示します。
つまり結果や成果に対し、全面的な責任を負うということです。
プロミスとの比較で説明した通り、そもそもコミットという言葉自体に強い責任が伴います。
さらにフルを付け加えて、フルコミットという場合はこの上なく強い責任が生じることになります。
つまり場合によっては、人を追い詰めることにもなりかねません。使い所には注意が必要といえるでしょう。
IT用語で使う場合のコミットは意味が異なる!使い方と例文をチェック
IT用語としてのコミットは、他の分野における用法と意味が異なります。
つまり人との深い関わりや、実行責任という意味ではないということです。
では具体的にどのような意味・用法なのか、是非チェックしてみましょう。
使い方と例文
確定・反映させること
IT用語としてのコミットは、まとまった単位の処理を確定させ、結果をシステムに反映させるという意味を持ちます。
まとまった単位の処理はトランザクションと呼ばれています。
トランザクションの結果を確定・反映させることをコミットというのです。
コミットをIT業界で使う時の例文
IT用語としてのコミットを理解できたところで、さっそく例文形式にしてみましょう。
例文
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オーバーコミットやコミットチャージの意味
オーバーコミットとは、仮想化したPC環境の下で行われる行為です。
具体的にはメモリやCPUなどのリソースを、ホストPCが持つスペックよりも多く割り当てることを指します。
つまり仮想化PCに対して、ホストPCのスペックを超えたリソースを提供する処理のことです。
一方コミットチャージとは、稼働中のコンピュータにおいて基幹システム(OS)から割り当てられるメモリ量のことです。
なお、メモリ量はOSから割り当てられている物理メモリと仮想メモリの合計値に相当します。
コミットに関するフレーズやコトバを集めてみた!
応用編として、コミットに関するフレーズや関連語を紹介します。
フレーズや関連語
結果にコミットする
日本において、コミットという言葉が一気に浸透したのはおそらくここ数年のことでしょう。
何といっても立役者となったのが、ライザップ社による有名なテレビCMです。「結果にコミットする」のキャッチフレーズは瞬く間に流行語になりました。
この結果にコミットする、というフレーズで使われているコミットの意味を考えてみましょう。
深く関わるという意味でもOKです。結果に深く関わる、としても問題なく成立しますね。
しかしより相応しいのは、やはり責任を持つという意味の方でしょう。
つまり企業として、責任を持ってダイエット成功を支援しますよとアピールしているのです。
ただ単に「ダイエット成功を約束」という触れ込みだと、ありふれていて全く新鮮味がありませんよね。
そこでコミットというフレーズに目をつけたというわけです。ライザップ社によるCM成功の裏には、綿密な戦略があったといえるでしょう。
コミット取り消し
コミット取り消しとはIT用語の1つです。
通常、コミットしたものを取り消すことはできません。IT業界、ビジネスシーンともに共通の認識ですよね。
しかし、プログラミング用バージョン管理システムの1つであるGitは例外です。Gitにおいては、コミット直前の状態に戻す処理が可能とされています。
つまりコミットを取り消し、直前の状態に戻すことをコミット取り消しと呼んでいるのです。
コミットメッセージ変更
コミット取り消しと同様、コミットメッセージ変更もIT用語の1つです。Gitの利用が前提である点も同じですね。
コミットメッセージ変更とは、Gitでコミット済のトランザクションに付したメッセージを変更することです。
通例であれば、コミット済のデータには一切着手できません。しかし、Gitの場合は例外的に編集が可能です。
また過去に実行したコミットに付していたメッセージを編集するだけで、それ以外のデータにはタッチしません。
使い方次第では、コミット取り消しよりも軽微な影響で済むといえそうです。
コミットメントライン契約
コミットメントライン契約とは金融用語の1つで、主に銀行業界で使われます。
具体的には法人向けの融資に関する契約です。
簡単にいえば、対象企業の信用度合いに応じて融資枠を設定し、融資枠内の貸付額をコミット(確約)するという内容です。
契約した融資期間と融資金額の範囲内であれば、任意のタイミングで融資を実行できるというのが謳い文句になっています。
コミットが足りないとはどんな意味?
コミットが足りないとは、当事者としての責任が不足しているという意味です。
実行責任であったり、責務を全うしたりする意志が薄弱だということになります。
ごく単純化すれば「覚悟が足りない」というニュアンスですね。
もしもコミットを守れなかったら?「デコミット」を解説
デコミットは英単語“decommit”のカタカナ語です。
デコミットとはコミットの反対語で、コミットした内容から逸脱・脱退するという意味です。
つまり、コミットを破棄するということですね。
例えば天変地異に見舞われた時のように、やむにやまれぬ事情でデコミットせざるを得ない状況は起こり得ます。
そこでデコミットを早めに伝えることによって、想定されるダメージを最小限に食い止める働きが期待できます。
デコミットを免れないとわかった場合、周囲への影響を考えれば事実を隠したりごまかしたりするべきではありません。
デコミットに伴う責任を全うするのもまた、ビジネスマンとしてあるべき姿といえるでしょう。