一般的に「申し出る」という行為を敬語表現にすると、「お申し出ください」ですよね。
「お申し出ください」とは敬語として適切か、疑問に感じたことはありませんか。
疑問の原因は「申す」という語句が含まれていることによるものでしょう。
「申す」に引っ張られるがゆえに、フレーズ全体に謙譲表現のイメージが付きまとうのです。
上記は「お申し出ください」を理解するに当たって必須の論点といえます。
Contents
「お申し出ください」の上手な使い方を例文と一緒にチェック
「お申し出ください」を上手に使えば、相手のアクションを促す効果が期待できるもの。
「お申し出ください」の基礎知識を理解し、例文で正しい使い方をイメージしてみましょう。
基礎知識
「お申し出ください」は目上の方に使える失礼のない正しい敬語表現
先に結論からお伝えすると、「お申し出ください」は目上の相手にも問題なく使える正しい敬語表現です。
「申す」という語句そのものは確かに「言う」の謙譲語ですが、「申し出る」については「届け出る」などと同様に、一般的な動詞の扱いになっています。
現代日本語では「申し出る」に謙譲語の意味合いが薄れ丁寧語に?
先述の通り、現代日本語において「申し出る」は一般的な動詞です。
「申し出る」ことを相手に促す敬語表現「お申し出ください」の場合は、謙譲語ではなく丁寧語ということになります。
一方で「申し出る」には謙譲語のニュアンスがあるのでは、と疑問を感じる方が多いのも確かです。
次の項では「お申し出ください」に代わる表現方法も紹介しましょう。
フランクに使いたいなら「おっしゃってください」が一般的な言い換え表現
いかに一般的な動詞といえども、「申し出る」はちょっと大げさに聞こえるもの。
同系統の「届け出る」にしても日常的なやり取りというよりは、やや改まった場面で使う言葉ですよね。
以上を踏まえ、そもそも「申し出る」や「お申し出ください」という言い回しを避け、別の表現で代替してみましょう。
「言う」の尊敬語は「おっしゃる」です。「おっしゃる」は尊敬語であるものの、ポピュラーな敬語として既に定着していますよね。
よって「お申し出ください」の代わりに、「おっしゃってください」と発言するのも有効です。「お申し出ください」というよりも、かえってフランクな印象を与えられるかもしれません。
口頭で使うには畏まりすぎ?「お申し出ください」はビジネスメール向け
「届け出る」と同様に、口頭のやり取りで「申し出る」というフレーズを使うことは稀でしょう。
「お申し出ください」についても同じことが当てはまり、人に対して面と向かって発言するにはやや畏まった言い回しですよね。
「お申し出ください」は話し言葉よりも、書き言葉に適しています。
敬意を表するべき相手に対してビジネスメールを送る時などに使うのがよいでしょう。
ビジネスシーンでみる「お申し出ください」の例文3選
紹介してきた基礎知識を踏まえ、ビジネスシーンにおける「お申し出ください」の具体例をピックアップしてみましょう。
例文
例文
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相手によって使い分け必須「お申し出ください」3種類の敬語表現
「お申し出ください」は丁寧語に該当するとお伝えしました。
お察しの通り「お申し出ください」の他に、より強い敬意を表す言い方も存在します。
「お申し出ください」から派生する敬語表現は3つです。
それぞれの使い分けを紹介しましょう。
派生する敬語表現
お客様や取引先への丁寧語「お申し出くださいませ」
「お申し出ください」を、いっそう丁寧にしたフレーズが「お申し出くださいませ」です。
同じ丁寧語でも強い敬意を表すため、お客様や取引先といった大事な相手に対して使う言い回しと考えるとよいでしょう。
ちなみに「~くださいませ」という表現は、話し言葉特有のもの。書き言葉として使うと不適切とみなされるため、要注意です。
目上の方や会社の上司への尊敬語「お申し出くださる」
「お申し出ください」の尊敬表現は「お申し出くださる」が当てはまるでしょう。
動詞「申し出る」に助動詞「くださる」を組み合わせたもので、敬語の種類としては丁寧語の「お申し出」と尊敬語の「くださる」という構成です。
目上の相手や会社の上司などに有効な言い方で、話し言葉、書き言葉のいずれにも使えます。
目上の方や会社の上司を立てる尊敬語「お申し出いただく」
「お申し出くださる」よりもさらに強い敬意を表す尊敬語が「お申し出いただく」です。
申し出るという行動を実行してもらう、といった趣旨を尊敬表現したものと考えればわかりやすいですね。
「お申し出ください」と「お申し付けください」の使い分けや意味の違いとは?
「お申し出ください」と比較されることが多いのが、「お申し付けください」というフレーズ。
語呂もよく似ていますよね。間違いを避けるためにも、意味の違いと使い分けを確認しておきましょう。
「お申し出ください」は、元々「申し出る」という動作に関する言い回しです。すなわち、申し出る側の人は自発的に行動する必要があります。
「お申し出ください」の場合も丁寧な言い方ではあるものの、アクション自体は声をかけられた側が主体となって行わねばなりません。
一方「お申し付けください」とは、簡単にいえば御用聞きの言葉。
具体的には目上の相手からの注文や用件などを伺い、用命・命令として承る際に使われるケースが主でしょう。
まとめると、「お申し出ください」は相手の「申し出る」行為を促す言葉。
一方、「お申し付けください」は自分から御用聞きの役目を買って出る言葉であるということですね。
「お申し出ください」の前に付けると好印象なフレーズとは?
「お申し出ください」は、相手の行動を促す声がけの言葉。
相手が主体的に動いてくれなければ話が進まない場合もあるものです。
相手の気分を損ねることなく自発的なアクションを促すには、「お申し出ください」の前に一言付け加えるのがオススメ。
付け加えの一言に使える代表的なフレーズを2つ紹介します。
付け加えの一言
「なんなりとお申し出ください」
「なんなりと」は「どんなことでも」「何であろうと」という意味。
「なんなりとお申し出ください」とは、「言いにくいことがあっても遠慮なく申し出て欲しい」というニュアンスを丁寧に伝える言い回しです。
「なんなりとお申しつけください」という決まり文句があるように、「なんなりとお申し出ください」という言い方も有効というわけですね。
「いつでもお申し出ください」
「いつでもお申し出ください」とは、簡単にいえば「タイミングを問わず、気兼ねなく申し出て欲しい」という意味です。
相手の都合を考えて行動できる人は、遠慮して自分の用事を後回しにしがちですよね。
「用事や用件を申し出るには相手の都合を考慮し、時と場合を選ぶべきだ」と考える気の利く人もいるものです。
「いつでもお申し出ください」は申し出る内容そのものよりも、申し出るタイミングについて悩んでいる人に対して行動を促すメッセージだと考えればよいでしょう。
ビジネスシーンで使える「お申し出ください」の言い換え表現を例文でチェック
ビジネスシーンにおいて、時と場合によっては「申し出る」という表現がベストとは限りません。
特に上司や取引先など、目上の相手とやり取りする際には注意が必要ですよね。
以上を踏まえた上で、「お申し出ください」の代わりに使える言い換え表現を考えてみましょう。
言い換え表現
「お知らせください」
先述の通り「申し出る」というと、少し大げさな印象を受ける場合がありますよね。
「必要な情報を伝える」というニュアンスに注目すれば、もう少し柔らかい表現として「知らせる」という表現も有効です。
上記を踏まえ、相手に対して「お申し出ください」の代わりに「お知らせください」と声をかけてもよいでしょう。
「お申し出ください」というよりも敷居が下がり、相手としても発言しやすい雰囲気になるかもしれません。
「お声がけください」
「お声がけください」とは、任意のタイミングで声をかけてもらって構わないという意思表示の言葉です。
「ご用命ください」などと似た感覚で使えますが、「声をかける」という飾らない言い回しを選ぶのがこのフレーズのポイント。
聞く側としても受ける印象が堅苦しくないため、気軽に声をかけやすくなるという効果が期待できます。
「ご連絡ください」
「ご連絡ください」とは、主に電話やメールなどの通信手段を介したやり取りを前提としたフレーズ。
時間や距離、効率や関係性などを考慮すれば、どんな相手とも直接会うのがベストの方法とは限らないでしょう。
電話やメールなどを利用してコンタクトを取ることをす促す際、「ご連絡ください」と一声かけておけばスムーズにやり取りが進むはずです。
「仰せ付けください」
「仰せ付けください」は「お申しつけください」と同様、いわゆる御用聞きの言葉です。
「言いつける」の尊敬語「仰せ付ける」を用いるため、ややかしこまった言い回しといえるでしょう。ホテルのスタッフなど、接客サービスのプロが使うことの多い表現です。
「お伝えください」
「お伝えください」とは、言伝(ことづて)を促す表現。
直接的なやり取りを促すというよりは、少し距離をとったやり取りを前提とした言い回しです。
例えば「スタッフにお伝えください」という言い方をする場合、自分に限らずその場にいるスタッフ全てが対象になります。
内容そのものは「お知らせください」と似通っていますが、相違点として相手の「意志や意見を伝える・伝達する」というニュアンスが強調される点に注目するとよいでしょう。
「ご教示ください 」
「ご教示ください」とは、教えて欲しい・説明して欲しいというニュアンスを丁寧に表す言い回しです。
一般的には質問する側が用いる表現ですが、例外的に相手の意見や考え方を伺う際「ご見解をご教示ください」などという聞き方をする用法もあります。
「お申し出ください」を英語で伝えたいときの表現方法を例文付きで紹介
「お申し出ください」のニュアンスを英語で伝えるには、、どのように表現すればよいでしょうか。
先述の言い換え表現を参考に、できるだけ近いトーンの文章を考えてみましょう。
例文
(どうぞ私にお知らせください)
・“Please don't hesitate to tell us what you need.”
(必要なものについては、気兼ねなくお申し付けください)
・“If you have any complaints, please notify the manager.”
(もしも不満をお感じになられた場合は、支配人にお申し出ください)
まとめ
「お申し付けください」や「お知らせください」など、似た表現と比較することで「お申し出ください」のニュアンスを掴んでいただけたのではないでしょうか。
ビジネスにおける言葉遣いは相手との距離感、力関係などによって微妙に変化するもの。
場面に応じて最適な言葉を選べるよう、感覚を磨いておきましょう。