「袖にされる」の意味と使い方を解説!「袖にあしらわれる」は誤り!類語・反対語も紹介!

婉曲表現の1つに「袖にされる」というフレーズがあります。持って回ったような言葉で、特に若い世代は避けがちな言い回しでしょう。

「袖にされる」とは元々、着物文化に由来する表現。洋服が主流になり、着物から遠ざかれば「袖にされる」と言わなくなるのも無理はないですよね。

たとえ自分は言わなくとも、上司や先輩が「袖にされる」と発言する場面があるかもしれません。今一度、「袖にされる」の意味や使い方をチェックしておきましょう。

この記事の内容

「袖にされる」の意味とは?

「袖にされる」という言葉には、やや古めかしいイメージがありますよね。古めかしい言葉には由来や語源がつきものです。

まずは原型である動詞「袖にする」から辿り、意味を確認していきましょう。

「袖にされる」は「袖にする」の受身形

「袖にされる」を理解するには、まず原型の「袖にする」からタッチする方がスムーズです。

「袖にする」とは「冷淡にあしらう」という意味。より簡単にいえば「素っ気なく突き放す」といったニュアンスで、冷たい態度を表す様をいうわけですね。

「袖にする」の由来・語源は?

「袖にする」の由来や語源にはいくつかの説があり、決定的なものはありません。有力な説は次の3つです。

・着物の袖に手を入れたまま、話を聞くばかりで実際には全く対応しない様。無関心。

・舞台の「袖」のように、“あまり”や“端の部分”といった従属的なものとして扱うこと。

・遠ざけようとする相手に対し、袖を振りながら追い払うさま。

決定的ではないにせよ、「袖にする」と着物文化が関連していることは想像に難くありませんね。

恋愛関係では「破局」を指す場合も

「袖にする」には言外に「元々親しくしていた人に対して」という意味があります。懇意という点から、恋愛関係を指すこともしばしば。

上記を踏まえ、「袖にする」には熱愛関係が冷え込み相手を突き放す、すなわち「破局する」という意味もあるのです。

現代語としては使われにくい用法ですが、「袖にされる」「袖にする」を語る上で外せない話題として覚えておきましょう。

「袖にされる」の使い方は?

「袖にする」の意味がわかれば、受身形である「袖にされる」のニュアンスも掴めるというもの。次は「袖にされる」の使い方をみていきましょう。

「袖にされる」は親しかった間柄で使う

馴染みのない相手との関係において、「袖にされる」という表現を使うことはありません。

「袖にされる」は親しい間柄であった相手に対して使うフレーズ。恋愛関係の有無を問わず、元々良好な人間関係が構築されていたことが前提になるというわけです。

ちなみに関係のない相手に冷たく接する様は「無関心」というのが適切。「袖にされる」と「無関心」は本質的に同義ではありませんので、注意しましょう。

「袖にあしらわれる」は誤用

「袖にされる」の誤用例として、稀に「袖にあしらわれる」という文言を見ることがありますよね。原型を確認すると「袖にあしらう」という動詞であることが窺えます。

「冷たく突き放す」という意味の似たフレーズに、「鼻であしらう」があるのをご存知でしょう。お察しの通り「袖にあしらう」の正体は、「鼻であしらう」の一部を「袖にする」と混合させた誤用例というわけです。

そもそも「袖にあしらう」は誤った言い回しなので、必然的に受身形の「袖にあしらわれる」も存在しないフレーズといえます。

「袖にあしらう」と「鼻であしらう」は確かに紛らわしいですが、動詞の原形や語源に注目することで誤用に気づけるはず。よく似た言葉を判別するには冷静な視点が大事ですね。

「袖にされる」の例文を紹介!

「袖にされる」の基本的な意味用法を踏まえ、例文形式で運用してみましょう。

例文

「聞いてくれよ、彼女と別れたんだ」
「えっ、嘘!?あんなに仲良かったのに?」
「それがさ、新しい男が出来たとかで…ちょっと前から袖にされるようになって、何かおかしいと思ってたんだ」
「得てして、女の方が駆け引き上手いからねぇ…まぁ、今日はとことん飲もうぜ!」
「すまんねぇ、ありがとう!」

例文

「着物の“袖”が付いた言葉で、冷たくあしらわれるって意味のフレーズ、わかる?」
「うん、『袖の下』だね!」
「違うって!『袖の下』は賄賂のことだ」
「あれ、おっかしいなー」
「正解は『袖にされる』だよ」
「おや、それって『袖にあしらわれる』じゃない?」
「『袖にあしらわれる』は、よくある誤用例。『袖にされる』で合ってるよ!」
「なんと、参りました!」

例文

「ウチの先輩たち、僕に無関心でさ…袖にされてるんだ」
「いや、入社したばかりでしょ。無関心はあり得るとしても、『袖にされてる』っていうのは違うでしょ」
「えっ、そうかな?」
「『袖にされる』っていうのは、元々親しかった間柄が冷え込んで、突き放されるという意味だ。まだ部署内の人間関係も構築できていないでしょうに」
「ああ、確かにそうだね!」
「一ついえるのは、先輩たちは今のところ忙しすぎて、多分新人教育まで手が回らないんだろうってことだ。繁忙期を過ぎるまで、マニュアルでもしっかり読むといいよ」
「ありがとう、気が楽になったよ!」
「まぁ、簡単そうな仕事を振ってくださいって頼んでみるのもいいかもね!」

「袖にされる」の類語は?


「袖にされる」にはいくつかの類似表現があります。ニュアンスの近いものを3つ紹介しましょう。

「冷淡にあしらわれる」

「冷淡にあしらわれる」とは、冷たく淡々とした対応を受けること。英語でも冷たい態度を“cold”と表するように、「冷たい」には普遍的にネガティブなニュアンスがあります。

「あしらわれる」という表現にも、丁寧な対応というよりは「雑な対応を受ける」「いい加減に扱われる」という意味合いがあると考えるべきでしょう。

「ぞんざいに扱われる」

雑に扱われる様を「ぞんざいに扱われる」といいます。「ぞんざい」とは「粗末」「大事でない」という意味。

従って「丁寧に扱われる」の真逆に当たるのが、「ぞんざいに扱われる」であると考えればよいでしょう。

「突き放される」

「突き放される」とは、つまはじきに遭うこと。「元々あった関係から外に追いやられる」というニュアンスを含み、「袖にされる」とよく似た性質があります。

男女関係で用いられることが多いという点でも、「袖にされる」と親和性の高い表現ですね。

「袖にされる」の対義語は?

類似表現に続き、「袖にされる」の反対表現を考えてみましょう。

「袖を引かれる」

「袖を引かれる」を現代風にいえばリードされる・エスコートされるという意味。

すなわち「手引きの誘導を受ける」という意味であり、着物文化における情景をイメージすれば理解しやすいでしょう。ゆかりのある相手に、袖を引かれながら誘導してもらうというわけです。

「胸襟を開く」

「胸襟を開く」とは、心中を隠すところなく打ち明けるという意味です。組織や対人関係において「袖にされる」という場合は村八分の意味合いを表しますよね。

反対に包み隠さずオープンな接し方を受けられるようになれば、組織や構成員が「胸襟を開いた」という状態です。

同じ意味のもう少し簡単な言い回しとしては、「腹を割る」の方が浸透しているかもしれません。

「袖にされる」の英語表現は?

「袖にされる」は着物由来ということからも、日本独特の言い回しです。しかし対人関係における「袖にされる」のエッセンスは、どの言語圏でも普遍的に存在する表現でしょう。

「袖にされる」のエッセンスは「冷たい」「冷淡」である点に注目し、英語表現に変換してみましょう。

“be given the cold shoulder by~”

“be given the cold shoulder by~”とは、「~から冷たくあしらわれる・冷遇される」という意味。

フレーズを理解するためのポイントとして、“cold shoulder”が「冷えたヒツジの肉(肩の肉)」を指す点に注目しましょう。

「冷えたヒツジの肉を提供する」という行為は英語圏特有の表現で、「粗末な料理を提供する」すなわち「相手をもてなす気がない」という拒絶の意志を表す意味があるのです。

上記を踏まえると、“be given the cold shoulder by~”は「~から冷たいヒツジ肉を供された」という意味。転じて「~から冷たくあしらわれた」という日本語訳になることがわかりますね。

”be treated coldly by~”

”be treated coldly by~”も、「冷たくあしらわれる」の別イディオムです。他動詞“treat”は「~を扱う」という意味。文法的には“treat + 目的語 (+ 副詞)”の体裁で運用されます。

当該イディオムも受身形であることを一旦無視すれば、“treat A coldly”で「Aを冷たくあしらう」というフレーズが原型だとわかるはず。

原型を踏まえ、受身形にすると”A is treated coldly by B”という表現になります。和訳すれば「Aさんは、Bさんから冷たくあしらわれた」という意味ですね。

恋人同士なら“jilt”でもOK

恋愛関係にある者同士であれば、他動詞“jilt”を当てはめることで「相手を振る・捨てる」というニュアンスを表せます。

懇意の間柄であることが前提という意味でも、日本語の「袖にする」に一番近い語句といえるかもしれません。

まとめ

「袖にされる」が「袖にする」の受身形であることを知っていれば、運用は容易ですよね。

一方「袖にされる」もしくは「袖にする」のどちらか1つしか知らないとなると、途端に表現の幅が限定され、さらには「袖にあしらわれる」などのような誤用を招いてしまいます。

日本語・英語を問わず、受身形になっているものは一旦原型に戻すことで、理解しやすくなる場合が多いもの。基本テクニックの1つとして覚えておきましょう。

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